7/22 19:30

ねむるだけ。ちょっと、ねむるだけだから。

シロの背を見ながら戦うのはなんだか新鮮で。
不思議な気持ちになりながら、クガネは首を傾げる。
音が、聞こえない。
感覚が、ない。
おもしろい、かな。
うん、これは、たのしいかもしれない。
徐々に、身体が冷えていく。

ふと視界の片隅を、きらりと何かがよぎって。


あ。


実際には、声にならない音があがる。

いつの間にか宙を漂っていたイヤーカフス。
慌てて手を伸ばそうとして、利き腕が壊れていたことに思い至る。
じゃあ左腕をと、ぎしり、無理やり身体を動かして。
カフスを指先で掴んだところで、ほっと息をついた。


ああでも、こまったな。
これじゃ、あそぶのも、ふべんだ。
べんきょうも、ひだりてじゃふべんだろうな。
しろに、ほうちされたら、いえにもかえれないし。
おふろは、いいや、なっちゃんといっしょにはいれば。
あ。しまった。
おこるかな。おこるよね。

おこられるなら、まあ、いいか。
おこってるかおも、すき。

なかれるのは、ちょっとこまる。
なかないと、いいな。

なかせたく、ないな。




「――…クガネ、」

静かな世界に、分身の声が聞こえる。
いつも通りの、冷めた声。
表情は、よく見えないけれど、笑っていて。笑っていて。


「…しろ、」

「……なんですか」

「ねむ、い」

「……、そう、ですか」

「うん、……」

「…クガネ、」

「ん……」

「……なんでも、ない」


「…うん、そ、か…」

じゃあ、おやすみー。

そう、ふにゃり、笑って。ふ…と、意識が遠のく。
僅かに、胸が軽くなる。



すこしだけ。すこしだけ、ねかせてね。

すぐに、また、わらうから。